多国籍チームビルディング

CTOの佐藤です。
この記事では多国籍のメンバーからなるチームを作り上げる取り組みについて書こうと思います。

背景

Arithmerで働いているエンジニアは日本人が一番多いですが、他の国から来たエンジニアも数多く います。
何人か例を挙げると、

  • フランスから東工大に留学、そのままAIベンチャーに就職後、弊社に転職
  • トルコから来日し東大に入学、新卒で弊社に入社
  • 韓国から来日し弊社に転職

などです。

何故弊社はコミュニケーションコストが上がる事を承知の上で、わざわざ外国人を採用しているので しょうか? diversityを確保するためとか、将来の国際的な事業展開を見すえて、などのやや「高尚な」理由を思いつかれる方もいるかもしれません。一方で、私の考えはもっと「単純」で、誰でも理解できるようなものです。

単に、日本人エンジニアだけを雇う事にすると、開発を進める上で必要な人数を採用できるとは思えないからです。

ITエンジニアの現在の採用市場は完全に売り手市場であり、今後10年以内に状況が劇的に変わると考える根拠は全くありません。高度なAIの研究開発ができる人材に限ると、さらに状況は売り手側に有利となります。このような状況下では、より優秀な人材をグローバルに探すのが良いと考えます。

IT 人材需給に関する調査 - 調査報告書 より抜粋

チームビルディング

生産性の高いエンジニアのチームを作るためには、エンジニアを何人か雇って納期・スコープなどの目標を与えればそれで良しというわけではありません。 各人のスキル・バックグラウンド・仕事を進めるに当たっての考え方などはバラバラなため、何の前準備もせずにいきなり共同作業をさせると当然うまく行きません。 良くて各人が全く別々に作業をして無駄が発生する、悪いとお互いの能力に不信感を抱く・仕事が進まずフラストレーションが溜まる、などの状況が発生します。

チームがこのような状況に陥らず、高い生産性を出せるためにマネージャーが行うべき努力がチー ムビルディングと言えます。

チームビルディングというのはただでさえ簡単なものではありませんが、 メンバーが多国籍の場合、日本人だけのチームでは必要のない配慮も行う必要があります。

チームビルディングのためにやっていること

朝会の言語を日本語と英語で毎日切り替える

エンジニアのチームでは、リモートワークという事もありまして、毎日朝会を行って開発の進捗状況共有・雑談を行っています。

日本人だけのチームでは当然日本語で朝会を進めていますが、日本語があまり得意ではない外国人がいるチームでは、日本語と英語を一日毎に切り替えて行っています。

毎日英語でやってみたこともあったのですが、そうすると英語があまり得意でない日本人がしゃべりづらそうだったため、現在のやり方に落ち着きました。

技術文書は極力英語で書く

開発をしていると、ソースコード中のdocstringやコメント、design doc、仕様書など、様々な技術ドキュメントを書くことになります。

担当している工程によっては、プログラムを書いている時間より長いほどです。

外国人がいるチームでは、内部文書は全て英語で書くようにしています。

こうすると、外国人エンジニ アが読み書きしやすいのはもちろんですが、日本人エンジニアにとっても英語力向上の一助となります。

そもそもソフトウェア開発を進める上で、開発ツールの公式ドキュメントやAIの論文は基本的に全て英語で書かれているため、英語が読めると読めないとでは入手できる情報の質・量ともに大きく変わってきます。

日本で仕事をする日本人であっても、ソフトウェア開発をする以上、英語は全くできないというわけにはいきません。

また、文書を全て英語で書くと、大したことはないですが個人的には無視できない利点として、日本語と英語の入力切り替えを全く行わずに済みます。(コードを書く時は当然英語入力ですが、コメントを日本語で書いていると切り替えが非常に面倒です)

ローコンテクストなコミュニケーションを心がける

日本は極度にハイコンテクストな文化を持っていると言われています。

そのためか、日本人同士で仕 事を進めていると、お互いここは理解しているだろうと想定して話を進め、後になってびっくりすることが少なくありません。
(日本の文化のせいではなく、私の仕事の進め方が悪いだけかもしれませんが…)

このような仕事の進め方をやっていては、外国人メンバーが入った時にうまくいかないのは目に見えています。

ただでさえ文化的な背景が違うのに加え、ほとんどの文化では日本よりローコンテクスト な考え方をするためです。
欧米諸国は言うに及ばず、隣国である中国・韓国ですらそうです。

このため、チーム内の開発会議・Pull Requestのレビューなどでは、前提を明示的にテキストで書く・ どの行がどうおかしいと思うかを明確に書く、などのローコンテクストなコミュニケーションを心がける ようにしています。

最初は明示しないといけない情報が増えて面倒に感じますが、慣れるとハイコン テクストなやり取りには戻れなくなります。そして、ローコンテクストなコミュニケーションを行うことでコミュニケーションロスが減り、結果として業務の質が高まるという恩恵が得られています。

多国籍チームで作ったソリューション

流体予測AIシステムは、このような多国籍チームによって開発されました。

このソリューションを実用化するにあたって、シミュレーションの並列化をクラウド上で実現するスキルを持った外国人エンジニアの寄与が非常に大きかったです。

また、予兆保全AIシステムも外国人エンジニアを含むチームが開発を担当しました。

この記事が、当社同様外国人エンジニアのチーム運営を行っているエンジニアリングマネージャーの助けになれば幸いです。